和紙のはじまりと原料について

<和紙のはじまり>

紙の博物館「紙の歴史と製紙産業のあゆみ」より参照
紙は、紀元前2世紀頃に中国で生まれました。 中国から朝鮮半島を渡り、日本には推古天皇の時代(西暦610年)、高句麗の僧「曇徴(どんちょう)」によって技術等が伝わえられました。 主に戸籍を記載する為や、お経の書き写しに使われていました。 (大変な貴重品だった為、リサイクルしながら使用) 最古の和紙は、西暦702年の戸籍を記載したものが奈良県にある正倉院に残っています。

<和紙に必要な原料~楮(こうぞ)~>

※楮(こうぞ)→和紙は木の皮から作られる クワ科の落葉低木。繊維が長く、太く、強いのが特徴。 (他に主な和紙の原料として雁皮や三椏などから作られる) 刈取り時期は12月~1月頃で、長さを揃えて蒸しあげる。 蒸しあがったら、芯の部分と木の皮を分けてから和紙にしていく。 また種類によっては実がなる。 赤い実で甘味が強い。 楮実(ちょじつ)と言って漢方や生薬にも使用されている。 また葉っぱも健康茶として煎じて飲むことができる。 (楮の栽培方法はこちら)

<和紙を作るのに必要な植物~トロロアオイ~>

そもそもトロロアオイって?
トロロアオイは漢字では「黄蜀葵」と書きます。 大きな黄色い花を咲かせるアオイ科の植物で地中深く根が伸びる性質で日当たりの良い場所を好む植物です。 野菜でよく見かける「オクラ」の花に似ていることから別名「花オクラ」ともいわれています。 写真で見ると本当に区別が分かりませんね。 (綿の花ともそっくりですね) 「オクラ」同様に、トロロアオイも花や実は食べることができます。 写真はトロロアオイの花弁で巻いたお寿司、 トロロアオイの花と実を細かく刻んでお豆腐のソースにしたもの、 トロロアオイの実を素揚げしたもの、 トロロアオイの実を刻んでもずくと合えたもの などなどレパートリーは豊富です。 では、なぜ野菜コーナーで見かけることはないのか?ですが、 花は咲いたらたった1日でしぼんでしまうため出荷して店頭で販売までもたないため、トロロアオイが咲いている地域のみでしか食べられない貴重な野菜ともいえるでしょう。 また、実もすぐに硬くなって種になってしまうのでこちらも貴重です。 みなさんも自分で育てられれば貴重なエディブルフラワー(花野菜)を食すことができますよ。
和紙にはどう使うの?
和紙にはトロロアオイの根っこを使用します。 根っこを叩いて水の中にいれてしばらくするとどんどん水がネバネバしてきます。 こちらもオクラの実を切るとネバネバしますが、さらにもっと強いネバネバが抽出できます。 この粘りを和紙の専門用語では「ネリ」と呼びます。 これを水をはった舟の中に原料の楮の白い繊維とネリを入れて和紙を漉(す)きます。
ネリは接着剤ではありません
和紙は基本的に接着剤で繊維をくっつけているわけではありません。 和紙は原料の楮(こうぞ)の繊維が絡んで出来上がっています。 それだけ繊維が強靭ということもいえますね。 ネリは、水の中で繊維を均一に分解させるのに大事な役割をはたしているのです。 水の中に繊維のみを入れると体積の問題で底に沈んでしまいます。 これを和紙すきの道具の簀桁(すげた)ですくうのは困難です。 トロロアオイのネリを入れて攪拌(かくはん)することで水中に繊維が浮遊して漉(す)くことができるのです。 薄い和紙を漉くには特にネリが必要になります。 (トロロアオイの栽培方法はこちら)