余ったり端だけになった和紙を新たな和紙に再生!

こんにちは。 ショップ「和紙ラボTOKYO」を運営する東京和紙の篠田です。 当方では、かばんやカード作りで余った和紙や端部分は廃棄せずに保管しております。 ある程度量ができたらまた新たな和紙を作るためです。 水に漬けて繊維を戻して再生させます。 和紙を再生させるのは今に始まったわけではありません。 江戸時代、東京の浅草でも和紙をリサイクルする産業がありました。 和紙を再生するにあたって現代でも使われている言葉が誕生したといわれています。 それはどんな言葉か、またどんな風に和紙が再生されるのかをご紹介します。
1、再生する和紙を水に漬ける
今回は、ショップドアにデコレーションするの和紙を作るため、ピンク色の和紙を再生させます。 ピンク色といっても濃い色から薄い色まであるので、ミックスされたときにどんな色合いになるかが楽しみです。 まずは、こまかく手でちぎっていきます。 ピンク色だけでなく、無地の和紙も併せて再生させていきます。(無地再生和紙の用途は別途検討中) なるべく手でちぎったほうが繊維の長さが保たれますが、少しハサミで切ってもよかったかもしれません。(理由は後程わかります) さらに繊維をほぐすため、水を入れて一昼夜漬けておきます。 この作業を昔の人は「冷やかし」と言っていました。 現代でも使用されている言葉は実は和紙を再生させる作業からついたと言われています。 しかも、浅草の和紙職人から出てきた言葉です。 「冷やかし」の歴史に関してはこちらのページをご覧ください。
2、攪拌して叩いて繊維を再度解す
和紙は、基本的に糊を一切使用せずに植物の繊維のみが絡まって作られています。 水に漬けただけではまだまだ繊維がからまっているため攪拌して叩いて繊維をほぐします。 昔の人は叩くだけでしたが、現代ではミキサーなど便利な機械があるので、時間省略なども含めて使用します。 叩く作業は、昔の人と同じように手作業で行います。 本来は、しっかりとここで叩いてほぐすべきだったのですが、短時間で済ませてしまったのが今回のちょっとした失敗でした…。 叩いた繊維を少量の水に漬けてどれくらいほぐれているかをチェックします。 まだ、少し繊維が固まりになっていますね。 もう少し叩いたのですが、時間がちょっと足らず…。
3、いよいよ和紙漉(す)き
再度多めの水に漬けて繊維をほぐします。 いよいよ和紙を漉(す)いていきますが、もう一つ大事な植物が必要です。 こ本来は、トロロアオイという植物の根から抽出した粘液を入れますが、今回はオクラの粘液を混ぜます。 和紙をたくさん漉くにはオクラの粘り気では弱いのですが、少量ならば十分にオクラでも代用できます。
この方法は、オンライン和紙作りワークショップで皆さんも体験いただくことができます。
道具も今回はキッチン道具で漉くことにしました。
この時にまだ繊維が塊になっているのに気づきました。 塊になっているとなかなか平滑な和紙にはなりにくいので、用途によってはしっかり細かくほぐすことが必要です。 オクラの粘りが効いているのでなめらかな和紙ができますよ。
4、圧搾、板干しそして乾燥
ゆっくりと水を落としたら圧搾します。 3枚漉いたので、併せて水気を絞っていきます。 給水タオルで挟んで板を置いて上から押して圧搾します。 この時点で表面が押されて平になっていきます。 本来は、アイロンなどで乾かしていくのですが、漉いた日がとても晴れて暖かったので、自然干しすることにしました。 板に和紙を張り付けておひさまにあてて乾燥させていきます。 3枚目は和紙の量が足りなくなってしまって、途中穴が開いてしまいましたがなんとか干せました。
再生和紙の完成!
翌日には乾いたので、板から外して完成です。 綺麗なピンク色の再生和紙ができました。 新しい和紙との違いは、表面の繊維です。 繊維自体が一度乾燥したものを使用するので、再生してもぼそぼそとした繊維になります。 身近な再生紙というと、みなさんはトイレットペーパーをイメージされると思います。 洋紙も和紙も同様で、新しい和紙との紙質に変化があるので、用途別に使用するのがよいと思います。 この再生した和紙の用途は後日ご紹介します。
動画でも紹介しています
一連の和紙の再生する方法は動画でも紹介しています。 和紙を余すことなくすべて使い切ることを目指し、その方法を今後も紹介していきたいと思います。 東京和紙は東京産の原料を中心に手すきで和紙を作っています。 この原料はとても貴重です。 自分でも栽培しているため、愛情もあります。 「もったいない」精神と廃棄量を減らすためにさまざまな手段で最後まで和紙を楽しんでいただける提案を今後もしていきます。